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Scikit-learnでデータをスケール変換する

 ·   ·   10 min read

はじめに

Pythonの機械学習用ライブラリScikit-learnに実装されている、スケール変換について調べた。スケール変換を行うクラス3つのパラメータとメソッドをまとめ、各変換の結果を比較した。

スケール変換は、扱う数値データを何らかの規則で変換するものである。機械学習で桁数の異なるデータをまとめて扱うときには、スケール変換がほぼ必須となる。
通常、ニューラルネットワークやSVM(サポートベクターマシン)では、スケール変換をしないとなかなか学習が進まない。ただし、ランダムフォレスト等の決定木を使う手法ではスケール変換は不要である。

この記事では、以下3つのスケール変換方法を扱う。

  • StandardScaler: 標準化(平均0, 分散1)
  • RobustScaler: 外れ値に頑健な標準化
  • MinMaxScaler: 正規化(最大1, 最小0)

2021/01/28 標準偏差と分散を誤って記述している箇所があったため修正。

環境

記事執筆時点で使用したライブラリのバージョンは以下の通り。

ソフトウェア バージョン
Python 3.6.5
Scikit-learn 0.19.1
NumPy 1.14.3
matplotlib 2.2.2

Pythonで以下の通りライブラリをインポートする。Scikit-learnのpreprocessingモジュールにスケール変換処理がまとめられている。

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import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from sklearn import preprocessing

以下、各スケール変換のパラメータとメソッドについてまとめた結果を記す。

標準化(平均0, 分散1)する

データの平均値と分散を変換する操作を標準化と呼ぶ。平均値を0, 分散を1とすることが多い。変換操作は以下の式で表される。
$$ Y = \frac{X-\mu}{\sigma} $$
ここで、$Y$は変換後のデータ、$X$は変換前のデータである。また、$\mu, \sigma$は、それぞれ$X$の平均、標準偏差である($\sigma^2$は分散)。

Scikit-learnで標準化は、
関数としてはscale,
クラスとしてはStandardScaler
という名前で用意されている。

StandardScalerクラスを使うと、あるデータに対して行った変換を別のデータに対して適用できる。
機械学習の場合、学習データに対して行った変換を、検証データに対して行うので、実用上はStandardScalerを使う機会が多いと思う。そのため、本記事ではStandardScalerのみ扱う。

StandardScalerのパラメータ

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preprocessing.StandardScaler(copy=True, with_mean=True, with_std=True)

StandardScalerクラスの主なパラメータの説明は以下の通り。基本的に全てデフォルトのまま使う。

copy
ブール型。デフォルト値はTrue.
Falseの場合、transformfit_transformメソッドで変換時に、変換元のデータを破壊的に変換する。Trueの場合、元のデータは変換されない。

with_mean
ブール型。デフォルト値はTrue.
Trueの場合、平均値を0とする。
Falseの場合、以下の変換になる。
$Y = \frac{X}{\sigma}$
分散は1になるが、平均が維持されるとは限らない。

with_std
ブール型。デフォルト値はTrue.
Trueの場合、分散を0とする。
Falseの場合、以下の変換になる。
$Y = X-\mu$
分散は変化せず、平均は0となる。

StandardScalerのメソッド

良く使うメソッドは次の3つ。
fit(X)
配列Xの平均と標準偏差を計算して、記憶する(変換は行わない)。

transform(X)
配列Xに変換を施して、変換後の配列を返す。

fit_transform(X)
配列Xに対して、fittransformを同時に行う。

なお、2次元配列を変換する場合、縦 (axis=0) 方向に変換が行われる。

StandardScalerの使用例

以下の2次元配列xを用意する。

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x = np.arange(0, 8, 1.).reshape(-1, 2)
print(x)
print(x.mean(axis=0))
print(x.std(axis=0))

実行結果

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[[0. 1.]
 [2. 3.]
 [4. 5.]
 [6. 7.]]
[3. 4.]
[2.23606798 2.23606798]

第0列目の平均は3, 標準偏差は2.24,
第1列目の平均は4, 標準偏差は2.24である。

次に、xを標準化する。

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sscaler = preprocessing.StandardScaler() # インスタンスの作成

sscaler.fit(x)           # xの平均と標準偏差を計算
y = sscaler.transform(x) # xを変換

print(y)
print(y.mean(axis=0))
print(y.std(axis=0))

実行結果
以下の通り、変換後の配列yは各列とも平均は0, 標準偏差は1となった。

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[[-1.34164079 -1.34164079]
 [-0.4472136  -0.4472136 ]
 [ 0.4472136   0.4472136 ]
 [ 1.34164079  1.34164079]]
[0. 0.]
[1. 1.]

ここで、

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sscaler.fit(x)           # xの平均と標準偏差を計算
y = sscaler.transform(x) # xを変換

は、以下と同じである。

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y = sscaler.fit_transform(x) # xを変換した結果が返る

外れ値に頑健な標準化

変換前のデータに極端に大きな値または小さな値が含まれていた場合、標準化を行うと大きく結果が変わってしまう。これを避けるため、データの四分位点を基準にして標準化を行う方法がある。

Scikit-learnでこのような変換は、
関数としてはrobust_scale,
クラスとしてはRobustScaler
という名前で用意されている。
本記事ではRobustScalerのみ扱う。

RobustScalerの変換操作は以下の式で表される。
$$ Y = \frac{X-Q_2}{Q_3-Q_1} $$
ここで、$Y$は変換後のデータ、$X$は変換前のデータである。
また、$Q_1, Q_2, Q_3$は、それぞれ$X$の第1~第3四分位点である。
標準化と比較すると、元のデータの平均が$Q_2$(中央値)、標準偏差が$Q_3-Q_1$であると仮定しているとも考えられる。
なお、上の式の分母で、どの範囲(パーセンタイル)のデータを使うかは設定で変更可能である。

RobustScalerのパラメータ

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preprocessing.RobustScaler(with_centering=True, with_scaling=True, 
                           quantile_range=(25.0, 75.0), copy=True)

RobustScalerクラスの主なパラメータの説明は以下の通り。
外れ値の多さに対して、quantile_rangeを変更する。

with_centering
ブール型。デフォルト値はTrue.
Trueの場合、データから中央値を引いて、平均を0とする。

with_std
ブール型。デフォルト値はTrue.
Trueの場合、quantile_rangeで選択したパーセンタイルのデータの差でデータを割る。

quantile_range
タプル型。デフォルト値は(25.0, 75.0).
標準化を行うデータの範囲をパーセンテージで指定する。
(25.0, 75.0)の場合、下位25%と上位25%にある値の差でデータ全体を割る。
また、特徴量が複数ある場合、それぞれの特徴量に対して数値が選ばれる。
なお、データの値は、NumPyのpercentile関数で取得している。
この関数は、パーセンタイルとデータ数が一致しない場合、補間して返す。そのため、データ数が少ない場合や、離散的な場合は注意する。

copy
ブール型。デフォルト値はTrue.
Falseの場合、transformfit_transformメソッドで変換時に、変換元のデータを破壊的に変換する。
Trueの場合、元のデータは変換されない。

RobustScalerのメソッド

StandardScalerと同じく、良く使うメソッドは次の3つ。
fit(X)
transform(X)
fit_transform(X)

RobustScalerの使用例

以下の2次元配列xを用意する。

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x = np.arange(0, 8, 1.).reshape(-1, 2)
print(x)
print(x.mean(axis=0))
print(x.std(axis=0))

実行結果

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[[0. 1.]
 [2. 3.]
 [4. 5.]
 [6. 7.]]
[3. 4.]
[2.23606798 2.23606798]

第0列目の平均は3, 標準偏差は2.24,
第1列目の平均は4, 標準偏差は2.24である。

次に、xを標準化する。下位25%と上位25%、すなわち[0. 1.][6. 7.]が無視される。

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rscaler = preprocessing.RobustScaler(quantile_range=(25., 75.))

rscaler.fit(x)
y = rscaler.transform(x[1:3])

print(y)
print(y.mean(axis=0))
print(y.std(axis=0))

実行結果
以下の通り、変換後の配列yは各列とも平均は0, 標準偏差は0.745となった。

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[[-1.         -1.        ]
 [-0.33333333 -0.33333333]
 [ 0.33333333  0.33333333]
 [ 1.          1.        ]]
[0. 0.]
[0.74535599 0.74535599]

正規化(最大1, 最小0)する

データの最大値と最小値を制限する変換を正規化と呼ぶ。最大値を1, 最小値を0とすることが多い。
変換操作は以下の式で表される。
$$Y = \frac{X-x_{\min}}{x_{\max}-x_{\min}}$$

ここで、$Y$は変換後のデータ、$X$は変換前のデータである。
また、$x_{\min}, x_{\max}$は、それぞれ$X$の最小値、最大値である。

Scikit-learnで正規化は、
関数としてはminmax_scale,
クラスとしてはMinMaxScaler
という名前で用意されている。

標準化と同様に、本記事ではMinMaxScalerクラスのみ扱う。

MinMaxScalerのパラメータ

1
preprocessing.MinMaxScaler(feature_range=(0, 1), copy=True)

MinMaxScalerクラスの主なパラメータの説明は以下の通り。
feature_range
タプル型。デフォルト値は(0, 1).
変換後の最大値、最小値を設定する。

copy
ブール型。デフォルト値はTrue.
Falseの場合、transformfit_transformメソッドで変換時に、
変換元のデータを破壊的に変換する。
Trueの場合、元のデータは変換されない。

MinMaxScalerのメソッド

StandardScalerと同じく、良く使うメソッドは次の3つ。
fit(X)
transform(X)
fit_transform(X)

MinMaxScalerの使用例

標準化と同じ2次元配列xを用意する。

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x = np.arange(0, 6, 1.).reshape(-1, 2)
print(x)
print(x.min(axis=0))
print(x.max(axis=0))

実行結果

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[[0. 1.]
 [2. 3.]
 [4. 5.]]
[0. 1.]
[4. 5.]

第0列目の最小値は0, 最大値は4,
第1列目の最小値は1, 最大値は5である。

次に、xを正規化する。

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mmscaler = preprocessing.MinMaxScaler() # インスタンスの作成

mmscaler.fit(x)           # xの最大・最小を計算
y = mmscaler.transform(x) # xを変換

print(y)
print(y.min(axis=0))
print(y.max(axis=0))

実行結果
以下の通り、変換後の配列yは各列とも最小値は0, 最大値は1となった。

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[[0.  0. ]
 [0.5 0.5]
 [1.  1. ]]
[0. 0.]
[1. 1.]

ここで、

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mmscaler.fit(x)           # xの平均と分散を計算
y = mmscaler.transform(x) # xを変換

としたのは、以下のようにしても同じ結果となる。

1
y = mmscaler.fit_transform(x) # xを変換した結果が返る

各変換の比較

2次元のデータを対象として、スケール変換の効果を散布図で確認する。
各変換のパラメータはデフォルトとした。

ケース1:平均(0, 0), 分散1

平均が原点、分散が各方向に1の正規分布データ200点を変換する。
StandardScalerは、変換前とほとんど変わらない。
RobustScalerは、StandardScalerよりも分散が小さくなっている。
また、MinMaxScalerは縦方向・横方向ともに0~1の範囲に収まっている。
sklearn-case1

ケース2:平均(5, -5), 分散1

平均が(5, -5), 分散が各方向に1の正規分布データ200点を変換する。
StandardScalerは、データの分布形状をほぼ保ったまま変換できている。
sklearn-case2

ケース3:平均(0, 0), 分散4

平均が(0, 0), 分散が各方向に4とした正規分布データ200点を変換する。
分散が4(標準偏差が2)なので、各方向とも-2~2の範囲に約68.27%, -4~4の範囲に約95.45%のデータがある。
StandardScalerでは分散が約半分となり、-1~1の範囲に約68.27%, -2~2の範囲に約95.45%のデータがあることになる。
sklearn-case3

ケース4:外れ値を加えた場合

ケース1のデータに、平均(5, 5), 分散1のデータを10点追加する。
ケース1の散布図をスケールを揃えて比較する。
RobustScalerでは、外れ値を除く分布の形状が、外れ値を加える前と後で変化していない。
一方、StandardScaler, MinMaxScalerでは、分布の形状が外れ値によって変化している。
ケース1(外れ値なし)
sklearn-case1a
ケース4(外れ値あり)
sklearn-case4

ケース1~4のソースコードは以下の通り。

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def plotScaler(x, xlim=(None, None), ylim=(None, None)):
    sscaler = preprocessing.StandardScaler()
    rscaler = preprocessing.RobustScaler()
    mmscaler = preprocessing.MinMaxScaler()
    
    xs = sscaler.fit_transform(x)
    xr = rscaler.fit_transform(x)
    xm = mmscaler.fit_transform(x)
    
    fig, ax = plt.subplots(nrows=2, ncols=2, sharex=True, sharey=True, figsize=(8,8))
    ax[0,0].scatter(x[:,0], x[:,1])
    ax[0,0].set_title("Default")
    ax[0,1].scatter(xs[:,0], xs[:,1])
    ax[0,1].set_title("StandardScaler")
    ax[1,0].scatter(xr[:,0], xr[:,1])
    ax[1,0].set_title("RobustScaler")
    ax[1,1].scatter(xm[:,0], xm[:,1])
    ax[1,1].set_title("MinMaxScaler")
    for i in range(ax.shape[0]):
        for j in range(ax.shape[1]):
            ax[i,j].axis("square")
            ax[i,j].grid()
    ax[1,1].set_xlim(xlim)
    ax[1,1].set_ylim(ylim)
    plt.show()

np.random.seed(0)

# ケース1: 平均(0,0),  分散1
x1 = np.random.randn(200, 2)
plotScaler(x1, xlim=(-3, 3), ylim=(-3, 3))

# ケース2: 平均(5,-5), 分散1
x2_0 = np.random.randn(200, 1)+5
x2_1 = np.random.randn(200, 1)-5
x2   = np.hstack([x2_0, x2_1])
plotScaler(x2)

# ケース3: 平均(0,0), 分散4
x3 = np.random.randn(200, 2)*2
plotScaler(x3)

# ケース4: ケース1に(5, 5), 分散1の外れ値を10点追加
x4_0 = np.random.randn(10, 2)+5
x4 = np.vstack([x1, x4_0]) 
plotScaler(x1, xlim=(-3, 8), ylim=(-3, 8))
plotScaler(x4, xlim=(-3, 8), ylim=(-3, 8))

参考

sklearn.preprocessing.StandardScaler — scikit-learn 0.24.0 documentation
sklearn.preprocessing.RobustScaler — scikit-learn 0.24.0 documentation
sklearn.preprocessing.MinMaxScaler — scikit-learn 0.24.0 documentation

Sklearnのpreprocessingの全メソッドを解説 | 自調自考の旅
Feature Scaling with scikit-learn – Ben Alex Keen

以下の書籍では、本記事で扱わなかったNormalizerというスケール変換について説明している。
Pythonのサンプルコードも多く、機械学習について一通りの知識が得られる良い入門書であると思う。

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Helve
WRITTEN BY
Helve
関西在住、電機メーカ勤務のエンジニア。X(旧Twitter)で新着記事を配信中です

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